ラーメン屋にて

どうしても黄色いうどんに納得できなかった。
黒いビールもカリフォルニアロールもすんなり受け入れられたけど、この黄色いうどんと硬水は無理！
育った環境に染みついた習性というものは恐ろしいもので、自己形成期に10年以上広島で過ごした経験は自分の舌にも少なからず影響を与えたらしい。
ことラーメンに関し、無意識のうちに自分の中でスタンダードな味っていうのが確定されておりいつの間にかそこからどれくらい離れているかで旨い不味いを決めていたらしい。

でももう自分は広島の住人ではないし、広島に帰ることもほぼないだろう。
失ったものに対して慷慨するのではなく、新しい環境に順応し、0からまた新しく行動範囲を広げていかなければならない。

こっちにきてしばらくは黄色いうどんが全くおいしいと思えなかった。
それでもずっと広島の味を食べていないと頭の中ではっきり描けていた味も、いつしかぼやけこちらで食べる味に対して少しばかりだが偏見のない目で対応することができるようになってきた気がした。経年というものは偉大である。

いつかぱっと目についた店に入って、偏見なく「うめぇ！」って言えるようになればいいなーと思い店を後にした。
夜空には広島にいた頃に見たものと同じ、オリオン座が輝いていた。